ハンガリーの「パーセント法」について 茶野順子さん

 

パーセント法とは、一般納税者が所得税の特定の割合(1〜2%)に相当する額を特定の公益機関に提供することを可能とする法律のことを指します。パーセント法の実施国は、ハンガリー、スロバキア、リトアニア、ポーランド、ルーマニアの5カ国あり、チェコ共和国、ブルガリア等で実施が検討されています。最初の実施国であるハンガリーは政府主導型ですが、スロバキア以降はハンガリーの動きを受けてNPOが運動を起こして勝ち取ったという歴史があります。

ハンガリーは所得税の歴史自体が新しく、税率が所得に関係なく一律です。このような国のNPOセクターは比較的新しく、国民の認知度が低いといえます。ハンガリーのNPOの資金源はソ連邦崩壊後、アメリカの財団が集中的に援助したという経緯がありますが、今はほとんどの財団が撤退しています。また、政府等からの援助も少なく、資金源に乏しいといえます。これからは、EUからの援助を求めて行こうとしていますが、これらの国ではこれからNPOの中での入れ替わりがあるのではないかと言われています。

パーセント法は、国家と宗教が分離していく過程で、政治的な意図を介入させずに教会への財源を確保する方策の一つとして導入された税制がモデルになっています。そのモデルとは、19世紀ドイツにて導入された教会税や、イタリアモデルによるボランタリーなコントリビューション所得税の0.8%相当額の使途を教会あるいは政府の行う特定の事業に指定することが出来るというような税制です。

パーセント法の成立過程については、ハンガリーでは小党が分立し、しかも政権がめまぐるしく変わると言われていますが、その中で1994年に二つの政党の連立政権が成立し、1995年秋の国会において1%の使途指定を含む新しい所得税法が検討され、1996年に特定部分の個人所得税の使途に関する法律(パーセント法)が成立しました。当初は教会を対象としていましたが、教会はもともと国から資金を得ていたので、市民社会団体等からの反対があったため、1996年のパーセント法は市民社会団体のみを対象とした1%でした。しかし、1997年に教会を受け手とした第二の1%を設けました。ハンガリーパーセント法は1%をNGOに、1%を教会もしくは政府の特別事業にあてるため、合計2%を納税者(個人事業主、農業従事者を含む)を対象として徴収します。使途指定の対象となる機関は、国の文化機関、美術館、地方自治体あるいはハンガリー国政府の支援を受けている文化機関です。受益機関の要件は、機関として登録してから2年以上経過していること、特別に公益があるとみなされた機関については登録より1年以上経過していること、PBOpublic benefit organization)法に規定された22の公益活動のうち一つ以上を行うことが定款に明記されていること(ただし、PBOステータスは1%を受益する要件ではありません)、ハンガリー国内の団体であること、ハンガリー国内の人口あるいは国外のハンガリー人の利益に資する活動を行っていること、PBO法にて規定された政治的活動(禁止事項)に関与しないことを定款に明記していること、公的な債務がないこと、あるいはある場合には税務庁が当該使途指定金によって債務を相殺することを認めることを明言することです。

受益機関の適格性の判断は税務庁が行います。1%の使途指定を受けたNGOは、書類を税務庁に提出します。書類審査後、税務署から団体に資金が振り込まれます。1%法による資金の使途は、定款により定められた公益活動に使い、事務所の経費等は含まれません。ただし、プログラムスタッフの給与等のプログラム間接経費は含むことが出来ます。また、当該会計年度を越えて支出することが可能です。使途指定金を受けとった機関は、翌会計年度の1031日までにパーセント法によって受領した資金の使途について公表するという報告義務があり、地域住民が当該機関の活動内容を判断するのに役立つことが期待されています。

ハンガリーではパーセント法成立前から政府からNPOへの助成金がありましたが、資金の出方が政治色の強いものでした。また、パーセント法が成立する前から寄付の優遇税制が導入されていましたが、寄付をする人が少なく、1997年のパーセント法の実施時にパーセント法を使って使途の指定をした納税者数は、寄付の優遇税制を使って寄付した人の10倍に昇りました。このように、使途指定金は納税者にとって寄付より取っ掛かりやすい法律であったといえます。パーセント法の効果は、2000年の中央統計局によると、50,000を超えるNGOのうち、約20,000の団体がパーセント法により資金を得ています。1%法によって使途の指定を受けた資金の合計額はNGOセクターの全収入の0.7%に相当します。2003年の使途指定金合計(NGOセクターのみ)は61億ハンガリーフォリント(約33億円)、全納税者の約3分の1にあたる1500万人が同法を利用しています。国民の意識調査では、99%以上がパーセント法を評価しています。パーセント法により資金を得る団体は、全国的に事業を展開している大きな団体が多く資金を得ており、1%法からの収入は全収入の4%です。また一方で、小規模で地域に根ざした団体については1%法からの資金が全収入の約25%を占めています。このことから、小規模な団体の方がパーセント法の恩恵を得ているといえます。また、昨年から、使途指定金の残りを利用して事業の支援をするというハンガリー国の市民基金が創設され、この結果を楽しみとしています。