「市民活動と地方自治体の税制・財政」 堀田 力さん

 

1.なぜNPOに対して財政支援をする必要があるのか?

2.どういう支援の仕方があるのか?(形の問題)

3.支援する場合に注意しなければならないことの3点について話を進めていきます。

NPO、ボランティア団体の社会的必要性と同じです。第二次世界大戦後から高度成長期後半まで市民活動としては政治的な反体制活動はありましたが、市民が社会作りに参加するという発想は殆んどありませんでした。この時代の公益は行政が作り出していましたが、戦後国民は経済的なものの豊かさを求めていた為、国民の求める物の豊かさを提供する企業を行政が応援しやすいような政治がされていました。1920年代から1950年代までは、政、官、財が連合体を作って、物をより多く、より安く国民に提供することで国民の生活レベルを上げるという時代が続き、この間労働者が経済的に豊かになる為に働いて月給をもらい、税金を納め、その税金で行政が公益を築いていくという構造が長く続きました。今でもその構造は根強く残り、そういう構造を転換する為に社会は今激動の中にあります。1980年代までは物の豊かさが重視され、それ以降は心の豊かさを求めるようになりました。更に市民の精神的な豊かさへの要求を実現するには、多様で高度な公益が求められ、従来の政、官、財では満たせない状況になってきました。そのため、市民が社会作りに参加し、その中でボランティア活動が生まれ、NPOが活躍するようになって、市民が求める多様な新しい公益を実現するようになりました。1980年代からそのような動きが強まり、新しい市民の求める公益というものは益々多様化し、参加する活動も広がってきています。そこで、市民が参加する活動に対して行政はどのように対処するのか、税制・財政のあり方という問題が出てきました。

市民が要求し実現する公益には、精神性・個別性など様々な要求があり、また今までは行政が行って来た事も財政難の為予算の制約上できなくなり、必要とする市民が自ら実現しなければならないという状況です。又、災害のときは行政のサービスがストップするなかで、水の配給、食事の炊き出し等ボランティアやNPOが活動し、公の機関が回復してくると引き上げるという災害ボランティアの活動があります。本来は行政が行うべき事を市民が実施するというのが災害ボランティアです。NGOも同じような活動で、海外の発展途上国から支援を求められると、NGO が出向いて行き、性質からすると行政が行うべき内容の要求に応える活動をします。このような基本的な様々な要素があり、行政もNGOもできない、市民活動として市民が実現していかなければいけないということが、求める公益のレベルが上がればあがるほど増えてきています。そして、活動する人も増えてきているというのがNPOの現状です。当初行政は、市民活動に関与しない考え方が基本的でしたが、徐々に市民活動の必要性が認知され、財政面等の基本的な支援をしようという考え方も出てきました。公益として住民の満足、幸せを実現する役割があるとしっかり認識している地方自治体ほど、NPOを支援したり協働でできるようになってきていますが、それは市区町村で顕著に差があります。それは、市区町村の長が、どれだけ住民のことを考えているか、住民がどれだけ住民のことを考えてくれる長を選び得るか、それによって行政の基本体質が変わってきます。ただし、議会が足を引っ張っているという構図もあり、議員をどう選ぶかという問題も関わってきます。市区町村長と議会をばらばらにしておくと、様々な素晴らしい提案が出ますが、実現しないという例もあります。そのようにして、住民に近いところほど、そして選挙の結果が行政に反映するところほど、市民活動を税制面・財政面においても、人の面(エネルギーの面)においても、協働という形で支援し、しかもその支援の仕方も、仕切るのではなく、なるべく自主性を重んじるという形で実現するという、非常に選択的な、進んだ地方自治体が出てきます。そして、有力者が票をまとめて選ばれて、地域の有力者の方にだけ向いている、従来のやり方を変えようとしないという地域は行政の市民活動への援助が進まないという格差が出てきています。それは国にも言えることで、最も進んでいるのは地方自治体との連携が必要で社会保障で住民の生活に密着している厚生労働省です。環境庁は熱意が無く予算も無い為、まだまだ遅れていますし、財務省が最も遅れています。役所に納めた税金を訳のわからない市民が使っていると考える昔ながらのか体制があります。

しかし、方向としては、着実に市民参加の方向で進んでいると言えます。行政ができない公益に対する要求が出てきて、市民参加の形ができてきた状況で、NPOやボランティアは公益を実現する為に活動しているのですから、それに要するお金に税金を出すということは税金を納めている人たちの気持ちにも合っています。またそういう活動の為に寄付するのは、公益の為にお金を出しているのですから、税金を払ったのと同じ行為で、免税にすべきものです。2重に公共の為にお金を取られることはあってはならないことです。

支援措置は昔から全くなかったわけではなく、法人税を免税にするとか、地方自治体で法人事業税を免税にする等の税制上の措置はありました。また、財政上も補助金、助成金、委託金はNPOに支払われていましたが、この基準が完全に行政の視点で仕切られており、複雑な条件等が決められ、新しい多様な公益を実現しようとする活動に合わなくなっています。国の法人税を免税されている寄付免税制度があり、全国にレクリエーションを広める団体には寄付免税が認められていますが、全国にボランティア活動を広げる団体には認められていません。このように行政サイドで決めると新しい動きが認められないという様々な問題点も出てくる為自由にいろいろなところに応援するする仕組みを作る必要があります。

そこで、どうすればのびのびとそれをいかせるのか、どんな方策があるのかを考えて提言しようとする動きになってきています。(NPO法人への寄付控除等の支援税制については)客観的な基準でも認めるという措置にしようという運動を行っていますが、財務省の基準とこちらの要求とは、はるかにに隔たりがあり、こちらは2万を超えたNPO全体に(優遇措置を)つけたいのですが厳重な審査の為現在は30団体のみで、2万分の30という現状です。

今年問題になっている公益法人改革に対しては、頑張って取り組まなければならないと考えています。これは地方の法人事業税にも反映します。

さらに税制面で、その中で進んできているのは、法令を頭から変えるのは大変なので、法令をうまく利用しながら、実質NPOに対する寄付が免税になるようにする方法として、福岡等の基金の取り組みがあります。寄付者の免税措置があり、地方自治体が実施したということで大変意味があります。横浜市も取り組もうとしており広がりが予想されます。

実質今の制度を利用しながら実現していくということは、ほとんど人手がかからない為、公務員の増員も必要とせず、この寄付金は市民が喜ぶことに使われていくという税金と同じ性質のものであり、寄付金を得て活動出来、またその活動によって市民が喜ぶ社会が広がっていくといいなと考えます。この制度が広がると、寄付免税措置を全部とったことと同じになり良いのですが、ただ税金の問題で財務省が難色を示す事が予想されます。一つ前例が出来れば一気に全国に広がっていくでしょう。これからの新しい支援のある動きだと思います。財政的支援のほうも、補助金、助成金、委託金ですが、従来の厳しい条件を付けるしくみから、相手を尊重しながらやっていくという動きが広がってきています。ひとつが、“協働”の方法で、行政がただお金を支出するだけではなくて、一緒に事業を行っていきましょうという動きです。私は神奈川県の「基金21」という制度の座長を最初から4年間務めていて、だいたい定着したので今年を最後に辞める予定ですが、100億のお金を貯めて、そこから毎年一億位を運営資金としてNPOに助成していますが、助成するだけではなくて、NPOのなかで行政も協力した方がいいという活動があります。たとえば里山を復活させるという活動では、地域の人と、行政が協力して行いました。審査会で選んだ団体に事業には一定期間助成をするが、ただし行政と一緒に活動を行うのが条件とし、行政の相手を選んでもらいます。団体と行政側とで協働で活動を行う話し合いをし、役割分担を決め、契約が成立するとプレゼンテーションをします。これは完全に対等で、両方の責任で行います。

また支援の方法として札幌市で実施している「つなぎの資金等を保障する」というのもあります。

そして一番進んだ形が市川市が実施し長野県も制度化しようとしている「パーセント法」です。自分たちで新しい公益を作り出そうという市民の声が反映される支援の制度です。これが信頼できるとなればどんどん広がって行くでしょうし、広がるようにすることが大事です。

最後に最も大事なことは、行政が出来ないことを自分たちでやるという人の心意気と、自発性を大切にして損なわないようにすることが新しい公益を作り出す絶対の条件です。